『光でもなく』

第一章10

動かなくなってしまった。
強くて穏やかな瞳は閉じられ、頬を床に押しつけて、先ほどまでの姿が嘘のように。
ソルティアは倒れたカオスに触れようと、震える手をそっと伸ばした。
人を攻撃したことなど、それによって倒れた姿を見たことなどすでに数え切れないくらいあるけれど。
目の前に自分のものではない黒髪が広がる。
恐ろしい色。だが包まれている持主は優しかった。抱きしめて、口づけてくれた。
手は、あとわずかで触れるというところで捕らえられた。
「………今回は随分と優しかったねソルティア。ヴァンのことで反省したのかな?見る限りではただ気を失っているだけで骨も折れていないようだが。……いいかい、君に会えるのはヴァンと僕だけだ。他の人間は何をするかわからないからね。少々手荒な目に遭わせてしまわないと。君に何かあれば僕は悲しいよ……?」
背後から抱きしめられ、体が強ばる。
フローリオの語調が優しければ優しいほどソルティアはどうしていいかわからなくなった。
「…でも、でも………この人は優しかったの。強くて……優しかったの。私を抱きしめてくれたの。フローリオ、殺さないで。お願い……この人を殺さないで。………お願い……。」
唇が震える。
腰に絡まる腕がゆっくりと解けていくのを感じ、それ以上声が出なかった。
「わかったよ。他ならぬ君のお願いだからね。……殺しはしない。だが幽閉させてもらうよ。野放しにしておくわけにもいかないからね。ソルティア、……いいね?」
耳をなでる声に小さく頷いて、「まったく今日は肉体労働の多い日だね。」などとぼやきながらカオスを抱え上げるフローリオから必死に目をそらした。
自分の願いが叶えられたわけではないと知っている。
『銀騎士カオス』と、フローリオはそう呼んだ。王子の乳兄妹。
与えられた部屋の外のことはほとんど何も知らないソルティアだが、カオスがフローリオにとって利用価値のある人間だということは理解できた。
「………フローリオ、フローリオ、………助けて。あの人を助けて。」
次第に遠くなった足音はすでに消えており、言葉を受け取る人間は誰もいない。
だからこそもらせる本音は決して聞き届けられないと知っている。
「フローリオ、フローリオ、フローリオぉ…………っ」
それでも他に呼べる名前を持っていない。
立ちつくして、泣きながら唱え続けた。
視界の端にさらりと黒髪が流れる。いつもいつでも自分をつけ狙っているかのような恐ろしい闇。

ソルティア、髪を伸ばそうか。髪には霊力が宿るそうだよ。僕は君の力にいつも助けてもらっているからね。

そう言われて今では足の付け根まで伸びてしまった。
見るたびに怖くてたまらなくても、フローリオが望むなら仕方がない。
だって嫌われたら生きていけない。
「……お願いだから、助けて。フローリオ……フローリオ…抱きしめて、くれたのぉ……っ!」
青灰色の瞳が美しかった。意志の強い光を宿した、とても綺麗な女の人。
強くて、優しくて、回された腕にすべて包み込まれたような気がした。
初めて思ったのだ。
黒を、美しいと。
初めて思えたのだ。
己の持ち物と同じ色彩のはずなのに。
「………………フローリオ……」
何度唱えただろうか、返事は返らない。
ソルティアはわななく唇を少し開いたまま自分の体を抱きしめ、腕に爪を食い込ませた。
まぶたをきつく閉じ、たまってもいない唾を飲み込む。合わさった唇はまだ震えていて体のすみずみに振動を伝わらせたが、十の痛みがうずくまることを許さなかった。
目を開くとやはり闇がそこにいる。
ソルティアは瞬時に目を閉じ、天を仰いでから開いて、まっすぐに前を見た。
自分から部屋を出たことは今まで一度もなかったが、そこまでの道のりは知っている。
すぐにでも折れそうになる足を動かし、静かに歩き始めた。
一歩歩いては振り返り、耳をすませて、その度に踵を返そうとし、爪を立てて前へ進む。静寂が肌を貫き微かな物音が心を握りつぶす。背後に幾度となくフローリオの幻影を見ながらやっとそこにたどり着いた。
ノックをする。
弱々しく扉に触れた手は音を立てず、もちろん返事が返ることもなかった。
くじけそうになる。
だがいつまでも無防備に姿を晒していることの方が恐ろしい。
そっと、少しずつ扉を開いていった。
徐々に見えてくる部屋の中には誰もいないように思えた。あるのはベッドとテーブル、そして水桶だけ。
ソルティアは体を滑り込ませると、音を立てないように扉を閉めた。
が、振り返って目にした光景に悲鳴を上げそうになった。
そこには赤い顔をしたヴァンが苦しそうに息をして横たわっていた。
「あ……あ、あ……ごめ、………っ…ごめんなさい……やっ………フローリ……」
途端にへたりこみ、今まで歩けていたことが嘘のように全身から力が抜けていく。がくがくと震えて、顔を背けることもできずにうめくしかない。
「……………ソルティ、ア…?」
突然の呼びかけに息を止めた。
熱に潤んだ瞳はいつもと違って怒りも苛立ちも含んでおらず、ひどく頼りなげだった。
「………泣くな。泣くなよ。……泣きすぎなんだよ。なんで夢の中でまで泣いてんだよ。……っ、…泣くなよっ!」
そう言って、自分こそが泣きそうに顔を歪める。
「…だって、わた、私……っ!ごめんなさいっ、ごめんなさ、ごめんなさい……っ」
「腹立つ女。ほんっと……おまえ見てるとイライラするんだよ!」
ソルティアは何も言えずフローリオの名を唱えてしまいそうになったが、なんとか口を押さえ、せめて部屋を出て行こうとした。
「……どこ行く気だ。あいつのところに行っても結局泣くんだろ!一緒だろ!…………いろよ、ここに…。」
引き留める言葉は、縋るようで。
聞き間違いかと思ったが、まっすぐな視線は確かにこちらに伸びていて、力の働くままに頷けば、寄せられていた眉根が少し緩んだ。
「…オレは、おまえが……嫌いだから。オレに怯えて泣いてもいいから、オレに謝って泣くのとか、やめろ。……どうせ本物も泣くんだから。夢くらい泣かずにいろよ。………鬱陶しいから。」
ソルティアは目を見開いて、瞬きして、どうしようもなくなって、両手で顔を覆った。
ごめんなさいと、今こそ告げたいのに、口にしてはならない。
「…っ、……鬱陶しいって言っただろ!」
ずっと責められているのだと思っていた。
その腕はこの身を抱きしめてくれたのに。
悲鳴を上げて、フローリオを呼んで、………傷つけて。
その髪の色も、その瞳の色も、こんなにも優しかったのに。
「わからない、の。悲しいのか、……嬉しいのか。わからないけど、怖く、ない。もう、怖くない。………あのね、…………触っても、いい?」
「………変な夢。」
ソルティアはヴァンの頭頂の髪先をかすめるように触れ、手を開いて、額から前髪をそっとなでた。
「……さらさらしてる。おでこは、ちょっと汗かいてるね。………苦しい?」
赤い頬に手の甲を押し当てる。すっと滑らせて、また髪に触れる。
「…夢じゃないよ。………夢じゃないの。」
「………夢だろ。」
もう我慢が効かなかった。
「ごめんなさい………ごめんなさい……本当に、ごめん、ね。」
堰を切って量を増す涙。止められない謝罪。
そうしたからといってヴァンの傷が癒えるわけではないのに。
ぐいっと髪を引っ張られ、瞠った双眸からまた涙が落ちる。
「夢じゃない……?…なんで、なんでここにいるっ?一人で来たのか!あいつは…っ……」
ヴァンは起きあがろうとして激痛にうめきをもらした。
ソルティアが慌ててヴァンの肩をそっと押す。
「……一人で、フローリオに内緒で来たの。」
その先を言う資格など、ない。
わかっていても、どうしても、口にしなければならない。
「お願いが、あって………ごめんなさい。助けたいの。あの人を助けたいの。……どうすればいいのかわからないの。私、私……っ、フローリオに嫌われるのが怖いっ……でも、…助けたい。」
ヴァンは呆然として、次にはっとした。
そういえば眠りにつく前誰かと話した記憶がある。
ソルティアを助けてくれと、そう叫んだ。
「…そうだ!あいつ、ハミルは…っあいつはどうしたっ?」
「ハミルさん…?」
「黒髪の女だ!」
「……カオスさんのこと?……私の、せいで……連れて行かれてしまったの。私、あの人を助けたい。あの人は強いから、もしかしたら一人で逃げられるのかもしれない…でも…何も…せずに、いたくない…。…だから、どうすればいいのか教えてほしくて…」
ヴァンはソルティアをまじまじと見た。
触感はあるし、夢ではないというけれど、未だ確たる現実味が持てなかった。
これほど会話を交わしたのは初めてではないだろうか。
そもそもソルティアがフローリオの許可も得ず自ら部屋を出るなど考えられない。
フローリオではなく、自分に願いを告げることなど。
だが、夢であろうと現実であろうと関係がない。
「………言えよ。何がどうなったのか。」
ソルティアは胸の前で拳を握りしめて語り始めた。

「……あいつが『銀騎士カオス』だとすると、地下牢じゃないな。できるだけ人目に触れさせたくないってのが普通だろうからな。…クソ野郎は他人を信用しない。だったら、部屋だ。クソ野郎の。そうでなければ隠し通路のどこかに隠し部屋もあるんだろう。となるとお手上げだ。探す場所が多すぎる。」
一部始終を聞き終えたヴァンが淀みなく意見を述べる。
ソルティアは自分の無力さを実感したが、ヴァンを頼って良かったと思った。
「じゃ、じゃあ、……フローリオの部屋に忍び込めばいいの…?」
「無事に入ることができたとしてもあいつを助けるのは別の問題だ。絶対に拘束されてるだろ。それに聖都から逃がすのはおまえじゃ無理だ。」
「………そんなことない。」
うつむいて、上目遣いに見つめる。
まだまだ勇気はないけれど、ちっぽけな覚悟ならある。
「移動魔法、使うもの。」
感情に流されやすいソルティアの力は荒っぽく、制御できているとは言い難い。
破壊するのは得意でも、空間を自由自在に歪めるような器用なことをするのは苦手である。
あふれた力があちこちに影響を与え、フローリオに気づかれてしまうだろう。
だがカオスを逃がせばどのみち気づかれるに決まっているとソルティアは思った。
「……化け物にならないこともできるって言ったもの。大丈夫。できると思う。……あの人は、フローリオに捕まっちゃだめ。…だめなの。」
ヴァンは下唇の裏側を切れるほど噛みしめていた。
銀騎士カオスが何を言ったのか、知らない。
だがソルティアは確実に強くなった。
責めるのは間違いだ、むしろ喜ぶべきことだ。
ただ、悔しい。
「おまえも逃げろよ。」
ソルティアは目を眇め、唇の両端をほんの少しだけつり上げた。
笑顔というにはあまりにも悲しすぎる表情にヴァンの神経が逆撫でられる。
「何やってんだよ!いつまであいつの言いなりになってんだよ!見てると腹立つって言ってんだろ!」
ソルティアにとってカオスを助けるという決断がどれだけ大きなものかを知っているのに怒鳴らずにはいられない。
「…うん。ごめんね。…ごめんなさい。………でも私は……フローリオは、私がいなくても生きていけるけど、私はフローリオがいないと生きられないんだもの。」
どこまでも拒絶されているような気になって、ヴァンは無理やり起きあがった。
「あいつがおまえに何をしたよ!いつだって利用されてただけだろ!抱きしめて、キ、キスくらいっ、いくらでもしてやるよ!目だって髪だって、……っ」
元々赤かった顔がさらに鮮やかさを増す。続けようとした言葉を飲み込んで手を伸ばした。
腕の中のソルティアは今度は叫ばなかった。
一瞬肩をすくませただけで大人しく抱きしめられてくれた。
首筋に弛む黒髪がわずかに顔をかすめ、その甘さに唇をどこへ寄せればいいのかわからなくなってしまう。
どうすればいいのか、回した腕をほどくこともできず、恥ずかしさを振り払うかのように力を込めると、突如として痛みを思い出した。
「…いっ………つ……」
「大丈夫っ?ヴァン、ごめんなさい。無理しないで…お願い。」
ソルティアの頬がほのかに色づいていたのが嬉しかった。
「……あいつ、カオス。数日ろくなもん食べてないみたいだった。捕虜の食事でも大分回復するだろ。しばらく様子を見た方がいい。……こんなもん、すぐ治るから。一人で動くなよ。オレも手伝うから。」
「うん、……うん。……ありがとう。」


天鵞絨のカーテン、天蓋付きのベッド。細かな文様が刻まれた机と椅子に、立派な装丁の本が詰まった本棚。
自分と手足に繋がれた鎖だけがそぐわない。
カオスは居心地の悪い様子を隠さず、退屈そうに鎖を鳴らした。
「客の扱いがなっていないようだな。」
フローリオは先ほどからずっと白銀の剣を多角度から眺めたり、刀身を触ったり、磨いたりしている。
「私に剣を向けた方のおっしゃることとは思えませんね。客だなどととんでもない。猛獣ですよ。」
そう言っている間も視線がこちらを向くことはなく、カオスは手錠をまた鳴らした。
「気に入ったのか。」
「……ええ、とても。とてもね。神話の時代、初代エイフィールド国王が時の砂から創造し、エイフィールドとバルドンを分かつ結界を張るために使われた伝説の剣。…その一振り。創世記に登場するそれが今この手にあるのですから。…楽しくてなりませんよ。私はね、正直王家が威信を保つために利用しているレプリカだと思っていたのですよ。いくら名剣とはいえ現在においても使われているとは思えないでしょう?それがどうです、この剣は伝説通り、選ばれし者以外にとってはただのなまくら刀だ。『時の砂』の記述が何を表すのか各種推論が飛び交っていますが、本当に、一体どのようにすればこのようなものができるのか、……面白いとは思いませんか。」
「……私は剣士だ。学者ではない。」
「歴史によれば『白銀の剣』の持主はほとんどが『銀騎士』。当然といえば当然なのかもしれませんがね。その『白銀の剣』が私の手にあるということが知れれば、どれだけの衝撃があるでしょうか。そういう面白さも含んでいる。本当に、楽しいですよ。」
眼鏡の奥で穏やかに細められる瞳が弧を描く唇と共にこちらを向いた。
カオスは手首に痛みを感じながら、これならばまだ盗賊に捕まっていたときの方がましだったのではなかろうかと思った。
「……いつか『黄金の剣』の方も手にとって見てみたいものです。」
こういう輩には表情を見せない方がいいと知っているのに、血が上りそうになる。
ヴォルトは、『黄金の剣』の持主は、今頃どうしているだろうか。
決して重荷にはなりたくない。
「………聖教会の最高司祭殿、教会は貴様の独断で動かせるほど小さなものではないだろう。王家に牙をむくとあっては、背後のお偉方が全員納得しているとは思えない。よくて共倒れではないのか。エイフィールドに悪戯に混乱をもたらすのはやめるがいい。」
フローリオはクスリと小さな音を立てて笑った。
「カオス殿、あなたは頭のいい方だ。手足を拘束されたその状態で唯一思うままに動かせる口を存分に駆使して画策している。………だがね、気づいているだろうけど、僕は鳥の羽をもいだり虫の足をちぎることがとても好きでね。時々目的を忘れてただ苦しむ様を見たくなる。下手なことは言わない方がいいんじゃないかな?せっかく見目良く生まれてきたのだから。……ねぇ?」
切れない刀を突きつけ、口の前に線を描いてみせる。
カオスは煮えくりかえるはらわたを抑えつけ、努めて表情を消した。
この男がここまで反応を示したのだ。聖教会の行動はこの男の独断と見ていい。動かしづらい教会に苛立ちを感じているということもほぼ間違いないだろう。教会内部の事情は外の者にはよくわからないが、近いうちこの男が失脚するか、内部分裂を起こすか、とにかくこのまますんなりとはいくまい。
問題はバルドン側がどう出るかだ。
季節外れの侵攻が繰り返されれば民の不安がどこまで高まるかわからない。聖教会の煽動に乗る人数は日増しに増え、王室への信用はみるみる下がっていくだろう。アデレド王は守りから攻めに転じるだろうか?そのときヴォルトはどうするのか。
どのみちヴォルトにとってつらいことになるのは間違いない。
「……おまえは平和を望んでいたのに。」
夢は内側から崩れていくのか。
カオスは聞こえない声でつぶやいて、固く目を瞑った。
『銀騎士』の称号など邪魔なものでしかない。
ましてやこの姿になった今、一体いかほどのことができるだろう。
結局重荷にしかなれない。
早くバルドンへ行かなければ。
己についての謎を明らかにしないことには何も始められない気がした。
フローリオは白銀の剣を弄るのにも飽きてベッドの上に放り投げ、懐中時計に目をやった。
カオスを一瞥すればさすがに観念したのか大人しくしており、自分がいる間は暴れる心配もなさそうだった。
カオスがここにいた件について、ヴァンをいじめに行こうかとも思ったが、今行ってもまともに応対できないに違いない。
問題もないのにソルティアに会うのも面倒だし、わざわざ他の人間と顔を合わせる気にもなれない。
かといって本を取り出すのはもったいない。
せっかく玩具がいるのだから。
フローリオは先ほどその口を封じたことをすっかり忘れて語りかけた。
「カオス、僕は君に聞いてみたいと思っていたことがある。…君とヴォルト王子はどういう関係なのかな?」
カオスの怪訝な眼差しに笑みを返し、近づいて黒髪に触れる。
「年の近い男女が同じ乳母の下で育ちしかも美男美女とあれば、当然の興味だろう?」
「………あれが美男などという柄か。」
静かな声音と裏腹に瞳が焼けつく怒りに染まっている。
愚かでないのに素直な人間とはとても楽しいものだとフローリオは思う。
「以前の君であれば第二夫人にならなれたかもしれないね。……可哀想に。ため息が出るような美しさだったのに。」
鎖の音がした。
カオスは鎖をいっぱいに伸ばしてフローリオの足を蹴りつけ、体勢を崩したところにもう一発見舞った。
「ふん、色などにこだわるからそのような目に遭う。私は何も変わってはいない。変わったとすれば、良い方に変わったのだ。……あの少女、ソルティア。心から美しいと思ったぞ。」
フローリオはクスクスと笑って眼鏡の位置を直しながら立ち上がった。
「ああ、あれはね、バルドン人ではなく異端者だよ。僕はあれほど見事な呪いは他に見たことがない。面白いよね、目も髪も真っ黒で。おまけに魔力を有している。人ならぬ存在だ。……君は何なのかな?以前会ったときは確かに銀の髪をしていた。なのに今は染めているわけではない、本物の黒髪だ。……興味あるなぁ。」
「貴様は…っ、ソルティアがどんな思いで……っ」
「…あれは、僕のものだよ?」
レンズは端の方にひびが入っていたが、その向こうで細くなる瞳は変わらなかった。
続く。
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