『ブーゴ』

 ブーゴはとても醜い生き物でした。
ブーゴのそばに行くと嫌なにおいがして、ブーゴをさわると汚いものがつくのです。
ブーゴはみんなから嫌われていました。
ブーゴ自身も、ブーゴのことが嫌いでした。
この世にブーゴのことが好きなひとはいませんでした。
だから、ブーゴはいつも一人でした。
 ブーゴは思いました。
さみしいなぁ。
僕はなんでこんな姿で生まれてきたんだろう。
たった一人でもいいから誰か僕と一緒にいてくれないかなぁ。
僕のことをわかってくれて、好きになってくれるひとはいないのかなぁ。
そのたった一人がいつか現れてくれることを、ブーゴはいつも願っていました。

 やがて、ブーゴのところにグーダがやってきました。
グーダはブーゴと同じく外見があまりにも醜いので、みんなに忌み嫌われている生き物でした。
ブーゴとグーダは本当によく似ていました。
だからこそブーゴとグーダはお互いの苦しみをわかりあい、なぐさめあうことができるはずでした。
しかし、ブーゴは自分自身のことが大っ嫌いだったので、ブーゴによく似ているグーダのことも大っ嫌いになってしまったのです。

 ブーゴはまた一人になりました。

 そしてまたブーゴのところに誰かがやってきました。
ニーアでした。
ニーアはとりたてて言うことも何もない、ごく普通の生き物でした。
それでもブーゴから見ると自分とは比べものにならないような美しい生き物でした。
ニーアはブーゴの苦しみを理解し、ずっと一緒にいることを約束してくれました。
あれだけ願っていたことが現実になったのです。
ブーゴはうれしくてうれしくて、不安になりました。
ニーアがどんなにブーゴのことを思ってくれても、ブーゴの姿は醜いままです。
ニーアがいつブーゴのもとを去っていっても、おかしくも何ともありません。
ブーゴは、どうやったらニーアにずっとそばにいてもらえるのか、そればかりを考えるようになりました。
いつでもどんなときでもそのことばかりを必死に考えていたので、ブーゴは疲れてしまいました。
ニーアは一緒にいても疲れてばかりいるブーゴを見て、ブーゴのそばから離れていってしまいました。

 ブーゴはまた一人になりました。

 ブーゴの気持ちをわかってくれて、ずっと一緒にいてくれると約束したはずのニーアがブーゴを裏切ってから、ブーゴは誰も信じなくなりました。
すっかりひねくれてしまったブーゴの前に、今度はリーフェが現れました。
リーフェは姿形がたいへん美しく、みんなが思わず見とれてしまうような生き物でした。
リーフェはブーゴのことを心からかわいそうに思い、みんながブーゴのことを嫌っても自分はブーゴのことを好きでいると約束してくれました。
ブーゴはリーフェがうそをついていると思いました。
こんなにきれいな生き物が自分なんかを好きになってくれるはずがない。
リーフェもニーアと同じように自分を裏切るつもりなのだ。
と、思ったのです。
ブーゴはことあるごとにリーフェを試すようなことをしました。
やがてリーフェはブーゴに嫌気がさして去っていってしまいました。
ブーゴは、やっぱりみんな結局は自分を裏切るのだと思いました。

 ブーゴはまた一人になりました。

 ブーゴは思いました。
さみしいなぁ。
僕はなんでこんな姿で生まれてきたんだろう。
たった一人でもいいから誰か僕と一緒にいてくれないかなぁ。
僕のことを本当にわかってくれて、絶対に裏切ったりしなくて、心から僕のことを好きになってくれるひとはいないのかなぁ。
その思いは以前よりもずっと強くなっていました。

 さみしいブーゴの前に、たった一人の人は現れるのでしょうか。


 ブーゴは今も一人です。
おわり。
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